Copilot ナレッジベースの管理
概要
GitHub Copilot ナレッジベースは、組織内の技術文書やドキュメントを一元管理し、Copilot Chat でコンテキストとして活用できる強力な機能です。この学習教材では、C#プロジェクトのドキュメントを例に、ナレッジベースの作成から活用までを実践的に学びます。
学習目標
- ナレッジベースの概念と利点を理解する
- 組織でナレッジベースを作成・管理する方法を習得する
- Copilot Chat でナレッジベースを効果的に活用する方法を学ぶ
前提条件
- GitHub Enterprise Cloud アカウント
- Copilot Enterprise プラン
- Organization 所有者権限
- C# の基本的な知識
シナリオ:C# Calculatorアプリケーションのドキュメント管理
あなたは組織で開発している C# Calculator アプリケーションのドキュメントを管理する責任者です。開発チーム全体がドキュメントを参照しながら効率的に開発できるよう、ナレッジベースを構築します。
ステップ1:ドキュメントリポジトリの準備
まず、ナレッジベースに含めるドキュメントを整理します。
// 例:Calculator プロジェクトのドキュメント構造
// docs/
// ├── architecture/
// │ ├── overview.md
// │ └── design-patterns.md
// ├── api/
// │ ├── calculator-api.md
// │ └── error-handling.md
// └── guides/
// ├── getting-started.md
// └── contributing.md
ステップ2:ナレッジベースの作成
- Organization 設定へのアクセス
- GitHub の右上隅でプロフィール写真をクリック
- 「Your organizations」を選択
-
対象組織の「設定」をクリック
-
ナレッジベースの設定
- 左側のサイドバーで「Copilot」→「Knowledge bases」を選択
-
「新規サポート技術情報」をクリック
-
基本情報の入力
- 名前:
calculator-docs
-
説明:
C# Calculator アプリケーションの技術文書とAPI仕様
-
リポジトリの選択
- 「リポジトリの選択」をクリック
calculator-app
リポジトリを選択-
「適用」をクリック
-
パスの指定(オプション)
- 「ファイル パスの編集」をクリック
- 以下のパスを入力:
-
「適用」をクリック
-
作成の完了
- 「ナレッジ ベースを作成する」をクリック
ステップ3:ナレッジベースの活用
Visual Studio Code での使用例
/// <summary>
/// 電卓の基本演算を提供するクラス
/// </summary>
public class Calculator
{
// Copilot Chat で質問:
// @knowledge-base:calculator-docs エラーハンドリングのベストプラクティスは?
/// <summary>
/// 2つの数値を加算します
/// </summary>
/// <param name="a">第1引数</param>
/// <param name="b">第2引数</param>
/// <returns>加算結果</returns>
public double Add(double a, double b)
{
// ナレッジベースのガイドラインに従ってエラーハンドリングを実装
if (double.IsInfinity(a) || double.IsInfinity(b))
{
throw new ArgumentException("無限大の値は処理できません");
}
return a + b;
}
}
GitHub.com での使用例
Pull Request レビュー時に、ナレッジベースを参照:
ステップ4:ナレッジベースの更新
ナレッジベースは指定されたリポジトリとパス内のドキュメントを動的に参照するため、以下の更新は自動的に反映されます:
自動的に反映される更新
- ✅ 既存のMarkdownファイルの内容変更
- ✅ 指定パス内への新しいMarkdownファイルの追加
- ✅ 指定パス内からのファイルの削除
手動更新が必要なケース
-
新しいリポジトリの追加
-
検索対象パスの変更
-
リポジトリの削除
更新手順: 1. Organization 設定の「Knowledge bases」へアクセス 2. 対象のナレッジベース右側の編集アイコンをクリック 3. 必要な変更を実施 4. 「ナレッジ ベースを更新する」をクリック
実践演習
演習1:基本的なナレッジベースの作成
以下の要件でナレッジベースを作成してください:
// 要件:
// - 名前: test-framework-docs
// - 説明: xUnit と Shouldly を使用したテストフレームワークのドキュメント
// - 含めるパス: tests/docs/, testing-guidelines.md
演習2:Copilot Chat での活用
作成したナレッジベースを使用して、以下の質問をしてください:
// テストクラスの実装
[TestClass]
public class CalculatorTests
{
// Copilot Chat での質問例:
// @knowledge-base:test-framework-docs Theory属性を使用したパラメータテストの書き方は?
[Theory]
[InlineData(1, 2, 3)]
[InlineData(-1, 1, 0)]
[InlineData(0, 0, 0)]
public void 加算テスト_正常系(double a, double b, double expected)
{
// Arrange
var calculator = new Calculator();
// Act
var result = calculator.Add(a, b);
// Assert
result.ShouldBe(expected);
}
}
ベストプラクティス
1. ドキュメントの構造化
# API ドキュメントの例
## Calculator.Add メソッド
### 概要
2つの数値を加算します。
### シグネチャ
```csharp
public double Add(double a, double b)
パラメータ
a
: 第1引数b
: 第2引数
戻り値
加算結果を返します。
例外
ArgumentException
: 無限大の値が渡された場合 ```
2. 定期的な更新
- ドキュメント内容の更新:リポジトリ内で直接更新(自動反映)
- ナレッジベース構成の見直し:四半期ごとに対象リポジトリとパスを評価
- 不要になったリポジトリ:ナレッジベース設定から削除
3. アクセス権限の管理
- ナレッジベースは組織全体で共有される
- 機密情報は含めない
- 必要に応じて複数のナレッジベースを作成して分離
トラブルシューティング
よくある問題と解決方法
- ナレッジベースが Copilot Chat に表示されない
- Copilot Enterprise プランが有効か確認
- ブラウザのキャッシュをクリア
-
IDE を再起動
-
特定のドキュメントが検索されない
- ファイルパスの指定を確認
- Markdown ファイルであることを確認
- リポジトリへの読み取り権限を確認
まとめ
ナレッジベースを効果的に活用することで:
- チーム全体でドキュメントを一元管理
- Copilot Chat で即座に情報を参照
- 開発効率と品質の向上
次のステップとして、Copilot Spaces の活用も検討してみましょう。より柔軟なコンテキスト管理が可能になります。